関門や九州に定着したEF81形400番台ローズピンクの彩り

関門トンネル専用機として活躍したEF30形の老朽化が進んだ国鉄末期の1986年、後継機として用意された交直流電気機関車EF81形400番台。ステンレス無塗装の銀色からローズピンク色の車体へ—。下関—門司間の鉄道風景は一変し、JRに移行後は九州各線にも足跡を残した。

関門トンネルは山陽本線下関(山口県下関市)—門司(北九州市)間にある全長約3600メートルの海底トンネルで、20パーミルを超える勾配がある。EF81形が同区間を通過する1200トンの貨物列車をけん引するには、重連で運用する必要があった。

「あさかぜ1号」をけん引して博多駅に到着した
EF81形400番台。赤い交流電気機関車のブルート
レインが発着するホームで見るローズピンク色は
新鮮だった一方で、少し違和感も覚えた=1990年

400番台は重連総括制御の装備を追加した区分で、一般形を改造して計14両が用意された。国鉄分割民営化に際し、401〜408号機はJR貨物が、409〜414号機はJR九州が継承し、それぞれ貨物列車や寝台特急のけん引に当たった。

しかし、EF30形やEF81形300番台といった無塗装のステンレス車体の機関車に見慣れていたせいか、ローズピンク色や一時見られた赤色のEF81形には違和感を覚えた。

見た目だけではない。海底下を走る関門専用機は腐食防止対策からステンレス車体としていたが、400番台は普通鋼のままである。屋根全面に防食効果材「ロンテックス」が塗布されていたが、詳しく知らない筆者は当時、「大丈夫なのかな」と思ったものだ。

九州に向かう貨物列車を重連で待機するEF81形
400番台(右)と同450番台。門司機関区所属機
はバリエーションが多彩で楽しめた=幡生操車場

EF81形400番台はそうした勝手な心配をよそに、性能的にも関門地区に特化していたEF30形とは異なり活躍の場を広げた。

寝台特急「あさかぜ1号」は博多まで、「富士」は大分まで直通。貨物列車のけん引機も、関門間に新型のEH500形が入ると、最終的には鹿児島地区まで入線するようになり、九州の電気機関車として親しまれるようになった。

関門、九州地区のEF81形は400番台以降、フレッシュな外観となった450番台も製造された。また、一部は富山機関区に移り、日本海縦貫線で運用された時期もあった。

関門トンネルを抜けて門司駅に入線する「富士
・はやぶさ」。EF81形400番台は九州ブルー
トレインの廃止まで活躍したが、晩年はヘッド
マークが省略され地味な印象だった=2009年

関門間のブルートレイン機としても魅力的だったEF81形400番台だが、一方で、書籍などで取り上げられることは少なかったように思う。

東京から九州に向かう「さくら」「はやぶさ」などが注目を集めた国鉄時代と異なり、JR以降は話題の中心が北海道に向かう豪華な「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」に移ってしまったのは、少し残念だった。

EF81形400番台は今春(2025年3月)のダイヤ改正で、最後の404号機が定期運用を退いた。晩年まで残っていた3両は人気を集め、たまに見かけると国鉄時代にタイムスリップしたかのようで、黙々と働く姿は郷愁を感じさせた。関門、九州地区では当初違和感を覚えたローズピンクの彩りは、40年近い活躍ですっかり日常風景に溶け込んでいた。

鹿児島本線で貨物列車をけん引するEF81 404。
関門地区から撤退後は日本海縦貫線でも活躍した
同機。定番だったローズピンク色は晩年貴重な存
在となり、人気を集めた=陣原—折尾、2025年

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bonuloco
東海道・山陽線の寝台特急に親しんだ元ブルトレ少年です。子どもの頃から手作り新聞を発行するなど「書き鉄」をしてきました。現在はブログ執筆を中心に活動し、ファンから見た小さな鉄道史を発表しています。
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