国鉄末期からJR初期にかけて「ジョイフルトレイン」と呼ばれた団体専用列車用の車両が各地に登場した。大阪鉄道管理局が用意した「サロンカーなにわ」は草創期から約42年間活躍した人気車両だった。
1983年、東京南鉄道管理局が用意した「サロンエクスプレス東京」とほぼ同時期に「サロンカーなにわ」は登場した。同じ14系を改造した欧風客車だったが、コンパートメント主体の客室で都会的な雰囲気の「サロンエクスプレス東京」と、リクライニングシートが並ぶ開放型客室で伝統の展望車風デザインを取り入れた「サロンカーなにわ」は方向性が異なった。ただ、それぞれの個性は際立ち、まさにジョイフルトレインの東西横綱のように感じられた。

最初の約11年間は塗色が落ち着いたものだった=1993年
大阪を拠点に団体列車で走る「サロンカーなにわ」だったから、地方の鉄道少年が見るにはちょっとハードルが高かった。月刊誌の運行情報に目を通すものの、なかなか見る機会はなかった。
登場から10年近くたった93年春、「サロンカーなにわ」は山陽本線小郡駅(現新山口駅)にその姿を現した。
初めてゆっくり眺めたその時はまだ旧塗色時代で、特に後年メリハリのある色調の黄色に変わった窓周りや帯の部分が金色だった。いま振り返ると控えめだったが、それがかえって伝統を受け継ぐ重厚感につながっていた。

デザインの展望室が目を引いた=1993年
その後、世の中の旅行形態が団体から少人数に変わると、各地のジョイフルトレインは車両の老朽化と相まって次々と引退していったが、「サロンカーなにわ」は2025年6月まで西日本各地を走った。改造から約42年もの長期間活躍したのは驚嘆に値する。
近年は「トワイライトエクスプレス瑞風」などの数ランク上の列車が登場し、「サロンカーなにわ」には豪華さより懐かしさを感じるようになった。そうした変化も、この車両が長く活躍した証しだろう。ジョイフルトレインの草創期から終末期まで、その華やかさを伝えた希少な存在だった。

た「サロンカーなにわ」=下関駅、2015年
※姉妹ブログ「れきてつ」では、2025年3月の「西日本一周の旅」として走る「サロンカーなにわ」を紹介しています
