国鉄ボンネット特急に浸る~クハ481-603の客室と運転台

昭和後期の国鉄特急を代表する485系電車。東海道の花形だった151系「こだま形」以来のボンネットスタイルは列島を駆け抜け、多くの人々を魅了した。九州鉄道記念館(北九州市門司区)ではクハ481-603を保存・公開し、その勇姿を伝えている。

国鉄電車特急の姿を現代に伝えるクハ481-603。
正面の特急マークや側面のJNRマークも懐かしい

クハ481-603は、グリーン車のクロ481-5として1969(昭和44)年にデビュー。「ひばり」など首都圏と東北地方を結ぶ特急列車で活躍した後、83年に九州に移ってきた。格下げ改造車としても有名で、同年から95年の引退時までは役割を変えて、日豊本線の特急「にちりん」などの普通車として走った。

外観は小窓が並ぶグリーン車時代の面影を残していて、座席間隔が狭い普通車の内装と窓の位置が合っていないところが、この車両の経歴を物語る。

客室に入ると懐かしい青色の座席が並ぶ。これは普通車に改める際、ちょうど欧風客車「サロンエクスプレス東京」への改造で余剰となっていた14系の簡易リクライニングシートを転用したもの。こんなところにも国鉄末期の歴史が垣間見えて面白い。

青い座席が並ぶクハ481-603の客室。
昭和の頃の旅の思い出がよみがえる

一方で運転台では非日常感が味わえる。階段を上がった狭い空間にはクラシカルな計器類が並び、その視界はずいぶん高い位置にあって新鮮だ。

58年にさっそうとデビューした「こだま形」も基本は同じスタイルだ。特急が文字どおり「特別」だった時代、運転士はきっと高揚感を抱いてハンドルを握ったことだろう。

クハ481-603の運転台。階段を4段ほど上がった
高い位置にあり見晴らしが良い。横や後方にも窓
があるため、天井は低いが閉塞感はそれほどない

約1450両が製造され大所帯だった485系だが、その保存車はわずか8両にとどまる。クハ481-603は生粋の九州育ちではなかったが、よく解体されず生き残ったものだと思う。

車窓に広がる風景、車内販売のワゴン…「乗車」して佇んでいると懐かしい情景がよみがえり、これが保存車両であることを忘れてしまう。鉄道に夢を抱いたあの頃へ、今も私たちを誘ってくれるのである。


※クハ481-603は客室のみ見学可能で、運転台は通常非公開となっています

bonuloco
東海道・山陽線の寝台特急に親しんだ元ブルトレ少年です。子どもの頃から手作り新聞を発行するなど「書き鉄」をしてきました。現在はブログ執筆を中心に活動し、ファンの視点から見た小さな鉄道史を発表しています。

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