1970〜80年代、小学生らに人気だったケイブンシャ(勁文社)の大百科シリーズ。鉄道に関するものもずいぶんあり、「入門書」の役割を担っていた。かつて上野—会津若松を走った485系特急「あいづ」は、「特急大百科」の名鑑で一番最初に登場する列車としておなじみだった。
82年の東北新幹線開業前、数多くの在来線特急が駆け巡っていた。「あいづ」もその一翼を担った列車だったが、地方都市へ向かう1日1往復のローカル特急は、58年に登場した青森行き「はつかり」や最盛期に15往復あった仙台行き「ひばり」に比べて影が薄かった。

遠く本州の端っこに住む鉄道少年にはご縁がなかった「あいづ」だが、「特急大百科」では親しみを感じていた。
同書の名鑑は五十音順になっていて、その最初に出てくる列車として心に刻まれていた。「会津」の意味を理解していなかった幼少期から気になる存在だった。

新幹線開業の影響を受けて、他の東北特急の廃止や縮小が進む中、立ち位置や走行区間が絶妙だった「あいづ」はその後も生き残った。
ただ、乗客が多いのは、新幹線と接続する郡山から先の区間で、90年代には上野を午後3時台に出発していて、首都圏からは利用しにくい列車だった。

の残党「あいづ」は1993年まで走った
上野に乗り入れる「あいづ」は93年11月末で姿を消した。「特急大百科」で親しんだ一人として乗っておきたかった筆者は最終運行の前日、大学の講義を終えて上野駅に直行した。「あいづ」の序章に過ぎない大宮までの1区間だったが、書籍で見た列車に少し接するだけでも満足だった。
薄暗いホームに映える磐梯山と猪苗代湖のトレインマーク。上野駅で見た「あいづ」からは、東北特急の残党としての風格が感じられた。


