配給列車6590レ・6591レ~どんな車両がつながってる?

鉄道会社内において車両や部品などの社用品を運ぶ配給列車。かつて山口、広島両県の山陽本線を走っていた配6590レと配6591レはブルートレインの電気機関車EF65形1000番台(PF形)がけん引し、下関・幡生の工場に入出場するいろいろな車両が見られる楽しみがあった。

山口県防府市の佐波川を渡る配6590レ。この日は
トラ145000形とワム80000形が見られた=1993年

広島に向かう配6590レは月曜、水曜、金曜に、下関に向かう配6591レは火曜、木曜、土曜にそれぞれ運転されていた。

検査を終えたブルトレ客車から老兵のような小さな貨車まで、つながれた車両は多彩だった。 けん引機だった下関運転所のEF65PF形もメインの運用は真夜中に走る関西ブルトレだったから、その姿が日中に見られるのは山口県内では貴重だった。

もっとも、当時学校があった筆者の場合、平日のお昼過ぎにやって来る配6590レはなかなか見られず、土曜午前に小郡駅(現新山口駅)で停車していた配6591レのEF65PF形をのんびり眺めることの方が多かった。

小郡駅(現新山口駅)に長い時間停車していた
配6591レのけん引機EF65 1128。真夜中に働く
ブルトレ機をじっくり見ることができた=1992年

まだ身近にインターネットがなかった時代、田舎の鉄道少年にはリアルタイムの情報が入らなかった。配6590レ、配6591レがどんな編成になっているかは当日のお楽しみだった。

寝台特急「あさかぜ」の客車が1両だけ連結されていたり、異なる形式同士が組まれていた時もあった。何だか単品で買いそろえた鉄道模型のようで面白かった。

この日は寝台特急あさかぜ3・2号の客車オハネフ
25形をつなげて走っていた=防府—大道、1992年

現代は交流サイト(SNS)などが発達して、目撃した人が発信すればリアルタイムで情報が得られる。いまも配6590レ・配6591レが走っていたら、この列車の楽しみ方はきっと違うものになっていただろう。

ただ、珍しいものに偶然出会った時の喜びは、鉄道に限らず思い出に残るものだ。

情報にあふれる日々とは無縁だった配6590レ・配6591レを見ていた頃。いま振り返ると、そこには「知り過ぎない幸せ」があったように思う。

bonuloco
東海道・山陽線の寝台特急に親しんだ元ブルトレ少年です。子どもの頃から手作り新聞を発行するなど「書き鉄」をしてきました。現在はブログ執筆を中心に活動し、ファンの視点から小さな鉄道史を発表しています。
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